企業訪問研修 「株式会社傳來工房」(でんらいこうぼう)
会社創業が平安時代初期だと伝えられる「傳來工房」さんの会社訪問は驚きの連続だった。
弘法大使・空海が唐から持ち帰った鋳鉄(ちゅうてつ、cast iron)技術を受け継ぎ、以来、技能の一番優れた弟子が、代々「傳來(でんらい)」の銘を継承し、今に至る。
現在の会社は、大正七年に現社長の祖父が「傳來」の銘を継承したと聞く。
歴史ある企業でして、取引先も最高裁判所の玄関上部や皇居に架かる橋の高欄等々、さらっと説明してくださるが呆気にとられるばかりでした。
伝統を活かして先端を行く、京都型ビジネス(独創と継続の経営術:村山裕三著)にあるように、傳來工房さんも、昔ながらの鋳鉄技術を生かしたアルミ鋳物・FRP(住宅・エクステリア)、アルミ・ブロンズ鋳物(住宅内外装)、ブロンズ鋳造・アルミ鋳造(モニュメント・胸像・彫刻作品等)等の事業を行っている。
経営理念
DENRAI CREDOS(傳來工房の信条)
●すべての人にアートフルな空間を通して夢を送ります。
●傳來に関わるすべての人にとって、よい会社を目指します。
●全員の夢の達成の場が傳來工房です。
DENRAI-KOHBO`S THREE VALUES(傳來工房3つの大切)
●お客様第一主義
●品質至上主義
●環境整備
経営理念ってどこの会社でも立派に掲げますが、傳來工房さんの本気度は凄い!
今回は「環境整備」の部分を中心に見学をさせて頂いたが、傳來工房さんの環境整備「礼儀・規律・整理・整頓・安全・衛生」どれをとっても、頭の下がる思いと自分の未熟さが際立った見学会でした。
橋本社長の朝一番のトイレ掃除が切っ掛けで、社内の隅々まで環境整備が整ったとのご説明の後、実際に工場内を見学させていただく。
実際に便器のなかに手を突っ込んでも綺麗です。と部長さんが実演をしてくださいました。
普段から皆の仕事ぶりや掃除に信頼をしているからだと思いますが・・・・簡単のことのようで難しい&自分は?と思うと恥ずかしい気持ちになった。
実際に会社のトイレは随分前から私自身がしているのだが、キレイにしているつもりでもここまではしていない。
もっと本気をだそうよ!・・・自分。と心に決めました。
≪定位置・定品・定量≫
「総務」
ある社員の方の引き出しは、入社7年目にしてボールペンは2本目です。との事。
すべての場所で全く無駄がありません。
3定とは、「あるべき位置」に「あるべき物」が「あるべき数量」を常に確保できる形や仕組みのことです。
説明はそれぞれの部署の(総務)担当者が説明をしてくださいますが、皆さん自信を持って堂々とご説明をします。
教えられてではなく、自分の考えでお話をします。これって凄いことだと思います。
「営業」
3定を実行する際に一番反対した部署が営業部だったと説明をしてくださいますが、今一番熱心に3定を実行しているのが営業部だと専務さんのご説明。
3定を実行することによって「最高の営業マン」を手に入れたも同然だと。
工場は最高のショールーム
お客様は最高の営業マン
社員は最高の商品
商品カタログも上の棚から取り出して、ある一定の箇所になったら下の棚から補充。さらに下の棚にも最低ストックが定められていて、最低点になった時点で発注するようになる。
営業部の方々の机周りは本当に綺麗。整理整頓は当たり前に・・・・・何と言うのだろうか、凄いです。
外回りの営業職の方の説明
色んなお客様の所に出向きますが「この黄色いカゴ」一つで殆ど用は達成できる。(確かに魔法の黄色いカゴです)
中身は
カゴを置く台そのものが補充用のスペースになっています。
急な修理依頼でもカゴを持っていけば事が済み、また外周りに行っていることがひと目で分かる。
兎に角、一つ一つの導線が明確に示されているので、誰もが安心して働ける環境になっています。
お客様の必要に120% その思想は社内の隅々まで行き渡っていました。
古い・狭いは恥じゃない。不潔・乱雑が恥。
「工場」
工場内は流石にうす暗いですが、物は整理されあるべき場所にあるべき物が置かれている。
ヘルメットホルダー
軍手入れ(レバーを引くと綺麗な軍手が取りやすく上がってくる。使用済みは下の段に入れて洗濯か廃棄かを判断する。)
巻き尺(使用しているうちに計数誤差が生じるので、基準となる数値が棚に貼ってある。不良品の発見も示してある)
型のストック。整然と保管された倉庫は芸術的ですらある。
鋳造工程場所なのですが危ない雰囲気が無いのは、整理整頓が行き届いているからだろう。
「製品検査」
仕上げの検査にしても必要なものは一箇所に纏められ、それを製品別に対応できるようにカスタマイズできるパレットが用意されている。
全く無駄な動きがなく、高品質の製品を「人」が生み出している。
工具を探す手間や無駄を省き、みんなでアイデアを出し合って生産効率は2年間で25%もアップしたときく。
納得です。
無から有(夢)を産み出すマシン・・・・・・・工場内の工夫は殆どがこの工作機械から産み出されています。
何よりも感動したのが、社員の方々の心遣い。
名前をかかれたカイロを見るのは初めて! ありがたく使わせて頂きました。
紙コップに名前が・・・・・・・
そして工場見学が終わって事務所に戻ってきたら。
おしぼりと温かい珈琲と御茶請けが・・・・・
まだまだ感動がありまして、当日はバスを借り切っての見学でしたが、社内から工場から全社員総出でのお見送りを受けました。しかもバスが50メートル先の交差点を曲がるまで手を振り続けて下さいました。
たまにガソリンスタンドでよく似た経験がありますが、お客様としてではなくこちらが勉強させていただいたのに、ここまでして下さるとは。
学びの多い見学会でした。
冒頭に引用した村山裕三の著書に「何を守り、何を捨てるのか」を常に考え、人を重んじ、競争力を獲得する手法とありますが、京都商法の真髄を目の当たりにした、衝撃的な一日でした。
傳來工房の社員の皆様。
橋本知良社長さま、ありがとうございました。