アーカイブ 3月 7th, 2013

玄界灘で世界初の外海養殖

木曜日, 3月 7th, 2013

宝飾品大手のミキモトが6日、玄界灘の離島・相島(福岡県新宮町)で養殖したアコヤガイの真珠ネックスレスセットを発売する。真珠養殖は波の穏やかな内湾で行うのが常識で、外海での商業ベースの養殖は世界でも初めて。内湾の養殖場が赤潮や感染症の被害に遭い、外国産真珠に押される中、同社は玄界灘産の「奇跡の真珠」で国産真珠の高品質をアピールし、巻き返しを図る。(田中一世)

 養殖真珠の国内の主な産地は愛媛・宇和海や三重・英虞(あご)湾、長崎・大村湾といった、潮流が穏やかでプランクトンが豊富な内湾だ。これに対し外海は、母貝の栄養源であるプランクトンが波に流されてしまうため、養殖地に適さないというのが定説だった。

 ところが平成12年、福岡県水産海洋技術センターが、7キロ沖の相島周辺の海で、母貝となる天然アコヤガイの生息を確認した。県、九州大、ミキモトの3者が共同研究を進めるうちに、相島沿岸は特殊な海洋環境であることが判明した。

 相島がある玄界灘は、南西から北東に向かって対馬海流が通っている。この対馬海流が博多湾に流れ込み、湾内の豊富なプランクトンを連れて相島周辺に流れていく。これがアコヤガイが生息できる理由だ。

 赤潮被害や感染症の被害に遭いにくい外海にありながら、内湾のメリットをもつ相島周辺にミキモトは着目。実験を繰り返し平成19年から本格的な養殖を開始した。

 初収穫の20年1月は8千個だったが、順調に生産量を増やし、今年1月は17万個に。これまで6年間の生産量は計約50万個に達している。業界団体の日本真珠振興会は「国内でも海外でも、外海での真珠養殖の事例は聞いたことがない」という。

 ミキモトが相島に注力するのは、内湾での養殖が危機的状況にあるからだ。

 平成8年ごろから、英虞湾など国内の主産地で感染症が流行し、母貝の大量死が続いている。このため養殖業者は感染リスクを避けようと長期養殖をやめるようになった。現在国内で養殖される真珠の9割以上が、核入れから浜揚げまで6~8カ月程度の短期養殖だ。

 養殖期間が短くなるにつれ、国産真珠は直径8ミリ以上の大玉が少なくなり、海外産の輸入品に押されるようになった。

 これに対し、外海の相島では1年半以上かけた「越年物」の養殖が可能。その分、真珠層が厚くなり、大玉になりやすい。実際、相島真珠は「ほとんどが大玉」(ミキモト)という。

 ミキモトは現地に子会社「ミキモト博多真珠養殖」を設立。収穫した真珠から、一定基準を超える品質の真珠をえりすぐり6日、高級ネックレスとイヤリングのセット(3サイズで約68万2500円~199万5千円)を発売する。取り扱い店舗は当面、福岡県内の5つの百貨店(岩田屋本店、同久留米店、博多阪急、井筒屋小倉店、同黒崎店)となるが、生産量が増えれば、県外での発売を検討する。

 ミキモトの広報担当者は「最初は『こんな外海では無理だろう』といわれていたが、定説を覆した。日本の真珠の品質の高さを、相島から発信していきたい。大きな挑戦です」と語る。

 また、福岡県も地域振興につながるとして、PRに力を入れる。県水産振興課は「初の福岡県産、しかも外海産の『奇跡の真珠』です。新たな特産品になるし、イメージアップにもつながる明るい話題」という。

 小川洋知事は1月23日、表敬訪問した吉田均・ミキモト社長に「日本の10大発明の1つが真珠養殖。わが県の相島産真珠を使った商品が世の中に出ていくことは大変うれしい。1人でも多くの皆さんに愛されることを願っている」と述べた。
産経新聞 3月3日(日)18時14分配信

御木本 福岡相島での真珠