アーカイブ 2月 27th, 2013

大月真珠が取り組む運河の再生

水曜日, 2月 27th, 2013

真珠は日本が誇る宝石のひとつ。真珠加工の大月真珠は、兵庫運河(神戸市兵庫区)でアコヤ貝を育てて環境再生を図る活動に取り組んでいるグループに全面協力している。環境保全と子供たちの環境教育を兼ねたもので、毎年、子供たちが参加する真珠アクセサリー作りは人気イベントだ。同社は小売りをしていない「BtoB」(企業向け取引)企業。このため、一般にはあまり社名が知られていなかったが、この活動は知名度アップという副産物を生みつつある。

 2月9日、ポートアイランド(神戸市中央区)にある同社本社ホール。兵庫運河で半年間、子供たちの手で育てられたアコヤ貝から取れた真珠を使って、アクセサリーを作る恒例のイベントが開かれた。

 これまで雨の日も風の日も、アコヤ貝の世話を交代で続けてきた子供たち約120人が集まり、同社社員の手ほどきを受けながら、ネックレスやブローチなど、思い思いのアクセサリー作りに挑戦した。

 「かわいいブローチができてうれしい。卒業式につけていきたい」。家族3人で参加した神戸市東灘区の小学5年、大西佑果さん(11)は目を輝かせた。母の照子さん(39)も「いままで興味がなかった真珠のことなどを勉強できて、参加して本当によかった」と話した。

 アコヤ貝のような二枚貝は摂食の際に大量の水をろ過し、水質を浄化する作用がある。その作用を利用して兵庫運河をきれいにしようと、平成19年に地元のPTAを母体に「兵庫運河真珠貝プロジェクト」が発足した。

 会員は地元の小学生とその保護者で、活動はアコヤ貝への珠入れから育成、浜揚げまで、真珠が生まれるまでの一連の作業。できた真珠でアクセサリーを作るイベントは、その最後を飾るものだ。

 大月真珠は環境保全と、体験を通した子供たちの環境学習というこの活動に賛同し、技術面で全面的に協力している。

 “パールシティー”を標榜(ひょうぼう)するだけに、神戸には真珠関連企業が多い。これは戦前から三重や愛媛、長崎などで生産された真珠が、国際貿易港だった神戸港に集積され、欧米に輸出されていたためだ。もともと真珠の生産を手がけていた大月真珠も戦前に神戸に移った。

 ただ、同社は小売りを手がけていないため、知名度が低く、いわば“知る人ぞ知る”企業。商品ブランドがないため、大学生の社名の認知率も非常に低い。「これはしかたないですね」と広報担当者。

 そんな同社がこのプロジェクトに関与することになったのは、17年に神戸市が実施した兵庫運河でのアコヤ貝生息実験に技術協力したこと。活動は2年後にこのグループに引き継がれ、現在に至っている。

 グループは地元のPTA関係者らが中心に運営。行政の補助はなく、活動は年会費(1人2千円)で支えるが、会費は事務経費で消え、運営は非常に厳しいのが実情。「大月真珠さんから原材料や技術、会場などを無償で提供していただいて、この事業が成り立ってます」とグループ関係者は感謝する。

 今年度採取できた真珠は304個。大きさは直径1センチにも満たないが、「中には品質が良く、商品として売れるものもある」(大月真珠担当者)と、なかなかのできばえだった。

 女性の間で「活動に参加することで、大月真珠という名前に親しみをもてるようになった」との声が増えている。こうした水面下でのファンの存在は企業にとって小さくない。

 「運河をきれいにしたい」という地元住民の思いに協力しようと始めた社会貢献活動は、ビジネスの面でも着実に“実”につながりつつあるようだ。自らの手で真珠を育てた子供たちも“真珠ファン”として、将来の顧客になるかも…。(内海俊彦)

産経新聞 2月24日(日)10時2分配信