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真珠養殖をめぐる技術の伝承と交換

木曜日, 2月 23rd, 2017

関西学院大学社会学部 島村ゼミ  社会学部 長岡優奈
「長崎の都市民俗」
http://d.hatena.ne.jp/shimamukwansei/touch/20170220/1487602006

目次

はじめに
第1章 長崎県の真珠養殖
1.長崎真珠、真珠養殖について/園田真珠店
2.長崎県真珠養殖漁業協同組合
3.深江真珠
4.あこや貝種苗センター
5.一般的な養殖技術

第2章 漁場ごとの技術伝承
1.漁場ごとの利害関係による管理技術の非公開
2.漁場ごとの海の環境差による養殖技術の差異
3.非公開の管理技術とは
4.管理技術の非公開が起こった背景

第3章 漁場を越えた技術の交換と共有
1.技術の交換の起こり
2.「真珠研究会」について
3.交換・共有が起こった社会的背景

むすび
http://d.hatena.ne.jp/shimamukwansei/touch/20170220/1487602006







橋本コレクション 於:国立西洋美術館

月曜日, 7月 7th, 2014

橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代まで ― 時を超える輝き

会期:2014年7月8日(火)~9月15日(月・祝)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分
毎週金曜日:午前9時30分~午後8時
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日(火)
主催:国立西洋美術館、東京新聞
後援:一般社団法人日本ジュエリー協会  公益社団法人日本ジュエリーデザイナー協会
協力:神戸ファッション美術館、公益財団法人西洋美術振興財団
観覧料金:当日:一般1,400円、大学生1,200円、高校生700円

本展では、2012年に同館に寄贈された橋本コレクションから選定された指輪を中心とする約300点の作品と、同館所蔵の絵画20~30点、さらに神戸ファッション美術館所蔵のコスチュームを併せて展示。人類と指輪の歴史を辿る第一部、装飾品という観点で指輪を捉え、その時代のファッションとの関係を探る第二部、指輪と絵画の関係性を追う第三部で構成される。

■第一部:人類と指輪の歴史

第一部では、古代エジプトから現代まで、その時代時代によって用途を変えた指輪の変遷を辿る。身の安全を祈願する護符として用いられていたもの、宗教において信仰の証として使われたもの、婚礼や死など人生の節目となる出来事を記憶するために作られたもの、大切な人物の細密画をはめ込み、愛情や友情の証として使われたもの、さらには「カルティエ(Cartier)」や「ブルガリ(BVLGARI)」などジュエリーブランドが制作した指輪などを幅広く展示。また、指輪の歴史を語る上で欠かすことのできないダイヤモンドの加工技術の発展を、指輪を通して紹介するスペースも設けられる。

■第二部:モードと指輪-ファッションを中心に

第二部では、神戸ファッション美術館が所蔵する18世紀のロココ時代から20世紀初頭にかけての衣服や靴を指輪と併せて展示、指輪をモードの枠組みの中から捉え直す。18世紀のマリー・アントワネットに代表されるロココ時代の宮廷ファッションから、19世紀末から20世紀初頭の植物文様を多用したアールヌーヴォー時代、直線に基づいた幾何学モチーフが特徴のアール・デコ時代、そして20世紀前半のココ・シャネル(Coco Chanel)に代表されるファッションまで、それぞれの時代の流行を追った指輪を展示し、当時のファッションとの関係を紐解く。

■第三部:絵画に見る指輪、指輪に見る絵画

国立西洋美術館の主要コレクションである絵画と、橋本コレクションの中核をなす指輪を併せて展示する第三部では、スペイン人の男性貴族を描いたヴァン・ダイクの絵画や、当時のパリのモードを反映した女性を描いたルノワールの絵画など、指輪を身につける人々を描いた絵画が並ぶ。また指輪に描かれた絵と、絵画作品や版画作品を比較展示することで、新たな切り口から西洋文化の魅力を探る。

この他、期間中には講演会やスライドトークも開催予定。指輪を通し、ファッションや美術、ひいては人類の歴史までを辿る、ほかでは見ることのできない貴重な展覧会になっている。

橋本貫志は1924年東京生まれ。古美術鑑賞家。元実業家。
東京美術学校(現東京藝術大学)油絵科卒業。日本、東洋、ヨーロッパの古美術品を収集し、これまでにもコレクションを東京国立博物館、東京藝術大学などに寄贈し、コレクターとして知られている。
今回展示される指輪のコレクションは、橋本さんが1980年代末から2002年にかけてオークションにご自身で参加して集められたもの。
寄贈を受けた点数は全部で805点、そのうちリング(RINGS)は720点ほど。指輪以外のものはオークションでセットとして指輪と一緒に落札されたネックレスや腕輪、スカラベ(コガネムシの形をした装飾品で古代エジプトの護符の類)、コインなど。
今回はそのうちの約300点を展示する。

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ジョルジュ・フーケ作《真珠とエナメルの花》
1900年頃 真珠、エナメル、ダイヤモンド、金
photo :上野則宏

講演会「パールジュエリー600年」横浜

水曜日, 6月 25th, 2014

横浜市港北図書館で6月29日、港北区内在住で歴史研究者の山田篤美さんによる講演会「パールジュエリー600年」が開催される。

日本最古の輸出品とも言われている真珠の歴史をひもといた「真珠の世界史」(中公新書)の著者としても知られる山田さん。
今回は、古来王侯貴族が愛用していた高級宝石「真珠」が、世界中の女性たちに広まった経緯と、そのファッションの変遷について語る。
会場では同館で所蔵する関連本の展示も行う予定。

同館の木村直之さんは「日本の養殖真珠が世界に与えた影響や、シャネルやディオールの真珠の用い方についての話もあり、真珠の見方が少し変わると思う。
この機会にぜひお越しいただけたら」と話す。

開催時間は14時~16時。参加無料。要予約。

日 時
2014 年 6 月 2 9 日 (日) 1 4 : 0 0 ~ 1 6 : 0 0
会 場
港北図書館 2階会議室A

申 込
港北図書館カウンターまたは電話で受付 TEL: 045-421-1211
定 員 5 0 人(先着順)
講 師
山田篤美 氏 ( 著 書 :『 真 珠 の 世 界 史 』(中公新書)他)

共催:港北図書館・港北図書館友の会

真珠の広告120年

月曜日, 5月 19th, 2014

鳥羽市のミキモト真珠島で、企画展「真珠の広告120年~広告・パンフレット・カタログに見る時代相」が開かれている。来年4月5日まで。宝飾品販売大手「ミキモト」の創業者・御木本幸吉が真珠養殖に成功してから約120年の歴史を、広告資料約80点と関連する宝飾品12点の展示を通して紹介している。

企画展では、1900年頃に国内の英字紙「ジャパンタイムス」に掲載した広告からウェブ広告まで時代の流行を取り入れた広告に加え、カタログ商品を復刻したペンダントや、71年当時に「100万円の品が1万円で借りられる」と反響を呼んだティアラ(冠)などを展示している。

また、パリで活躍した画家・藤田嗣治の夫人が所蔵していた「3連の首飾り」も特別展示している。

御木本は創業当初から活字の宣伝力に着目し、新聞広告などを通して真珠の魅力を消費者に訴えてきたという。同島では「幸吉は、お客様と最初に接する広告に力を入れた。当時の広告から時代の移り変わりを見てほしい」としている。

真珠の広告

期 間 : 2014年4月26日~2015年4月5日

場 所 : 御木本真珠島 真珠博物館1階 企画展示室

1893年に誕生した養殖真珠。その魅力を伝えるため、御木本幸吉はさまざまなメディアを活用しました。なかでも新聞などに掲載された広告や販売促進用の印刷物は、真珠および宝飾品の美しさを具体的に伝えており、デザイン上も高く評価されています。
そして戦後、人々の暮らしが豊かになり、真珠の装身具に関心が集ると、真珠の美しさの訴求だけでなく、装身具のある生活を提案する手法を用いて、様々な試みが行われました。
この企画展では明治から平成にいたる数々の広告物を通じて、ミキモトが培ってきた美意識を再確認し、宝飾文化普及に果たした役割を考えます。

入場料は大人1500円、小中学生750円。問い合わせは、ミキモト真珠島(0599・25・2028)。

真珠養殖の先駆者

土曜日, 3月 22nd, 2014

三重県志摩市にある、大石博久さん宅の蔵の横に50数年前のあこや貝の貝殻が眠っている。

大石博久さん宅

大石さんのお父さんが真珠養殖をされていた頃、ハートの真珠にチャレンジしていたと語ってくれた。
結果としては成功しなかったというが、先人たちの強い想いが見える。

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真珠は丸いものであるとの固定観念が強い時代に、ハートの真珠を生み出したいとの夢を、叶えは出来なかったかもしれないが持ち続けた先輩が確かにいた。

手法はマベ真珠の生産と同じ手法。
蝋石(ろうせき)をハート型に彫刻してアコヤ貝の内側に貼り付ける。
貝が持つ本能、貝殻形成力(貝殻を作ろうとする本能)を利用して蝋石の表面に真珠層を形成させていく。

これ以外に「えびす大黒」の顔の真珠を作っており、三個成功した。
そのうちのひとつは大石さんが所蔵し、あとの二つは海を渡って英連邦宝石学協会鉱物博物館とフランス宝石学協会に寄贈したという。

「えびす大黒も同じ様に蝋石をえびすの顔に彫刻して入れるのですがエクボやホクロ、コブが自然と出来て一つ一つ顔が変わっていきます。ユニークですよ。」と、大石さんは言う。

アイデアマンであった、親父さんたちは、核をお茶葉に浸けて核に茶渋を着けてブルーパールを作ったり色々なことにチャレンジしていたんだ。
素晴らしい先輩たちに敬意を表すると共に、我々が本物の真珠の良さをもっとアピールする努力をしなければと強く思います。

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写真等の資料を頂戴しました。
ありがとうございます。
株式会社 BIG STONE 代表取締役 大石 博久 氏

神奈川県三浦市  真珠養殖 復活プロジェク

木曜日, 3月 6th, 2014

三崎のマグロで知られる神奈川県三浦市で、真珠養殖の復活プロジェクトが動き出した。
世界初の養殖技術はもともと、三浦半島先端にある東京大学三崎臨海実験所(三浦市三崎町小網代〈こあじろ〉)で明治期に研究されていたが、地元で産業化されず忘れ去られていた。
宝飾大手ミキモト(東京都中央区)も巻き込み、幻の「三浦産真珠」に夢が膨らむ。

1月下旬、実験所の実習室。実験所のスタッフやミキモト社員らが、約30個のアコヤガイを開いた。
昨年夏に小学生20人が真珠の芯となる直径5ミリの「核」を入れ、近くの海で養殖してきた「成果」の確認だ。

かろうじて真珠になっていたのは1個。それも、
とても商品にはならない。
「プロが核入れしても、商品になるのは10個に1個」。
ミキモトで真珠研究に取り組む樋口恵太さんは話す。

1886(明治19)年に設立された実験所は、近代日本の海の動物研究の拠点だ。
初代所長の箕作佳吉(みつくりかきち=1857~1909)が、ミキモト創業者で「真珠王」と呼ばれた御木本幸吉(1858~1954)に真珠養殖の事業化に向けて技術的なアドバイスをしたとされる。
1899年には実験所に御木本が来て、箕作と研究の進み具合を話し合ったとの記録も残る。

だが、御木本は故郷の三重県の英虞(あご)湾で養殖に着手した。
一方、実験所では明治の終わりに養殖場を廃止。戦後まで業者が三浦半島で養殖をしていたとも言われるが、「三浦産真珠」は忘れ去られた。

現在の実験所長でプロジェクトを主導する赤坂甲治教授(分子細胞生物学)は「人口急増と都市化で周辺の海が汚れ、三浦ではアコヤガイが育たなかったのではないか」と分析する。
いまは下水の処理技術の向上で「生態系が豊かになりつつある」という。

ただ、学生のころから実験所に通う赤坂教授も、ここが「真珠養殖発祥の地」だとは長く知らなかったという。
きっかけは2008年、ミキモトがシンポジウムでの講演を赤坂教授に依頼したこと。
再び縁は深まり、09年には実験所とミキモトが共同研究を始めた。
10年からは毎年夏に、ミキモトが小学生に核入れをしてもらう体験会を実験所で行っている。

プロジェクトが本格的に動き出したのは昨年秋。
赤坂教授が中心となり、実験所に隣接する水族館「京急油壺(あぶらつぼ)マリンパーク」や地元漁協、三浦市、ミキモトなどと復活に向けた協議を開始。
まずは、三浦産のアコヤガイを増やそうと、漁協が100個の母貝の養殖に着手した。
16年には、漁協で育てる稚貝の養殖を数千個規模にまで拡大させる計画だ。

ただ、ミキモトは三重県と福岡県に養殖場を構えており、三浦半島での養殖は「あくまでも研究の一環」(広報宣伝課)として、本格的な養殖には否定的。「三浦産真珠」が市場に出回ることは今のところなさそうだ。
一方、実験所は、真珠養殖を、子どもの海洋教育に役立てたい考え。実験所の浪崎直子特任研究員は「貝の生態だけではなく、物理や化学も学べるモデル教材になり得る」。
アコヤガイを養殖する地元漁協の出口浩さんも「近くの海で真珠ができることを示し、子どもたちに地元の海のよさを知ってもらえれば」と話す。

赤坂教授は「海洋教育に限らず、将来的には観光者向けの核入れ体験など、次の展開もありうる」と期待する。

(朝日新聞2014年3月3日:久保智)

御木本幸吉

土曜日, 1月 25th, 2014

1858年の今日は、ミキモトの創業者 御木本幸吉が生まれた日です。
本日22:00より、BS-TBS『未来へのおくりもの』にて「輝きを未来へと!~真珠から始まる未来への挑戦~株式会社ミキモト」と題した番組が放映されます。
「世界中の女性を真珠で飾りたい」―幾多の困難を乗り越え、世界で初めて真珠の養殖に成功した幸吉の願い、そしてその美の精神は今も受け継がれています。


御木本幸吉

巻き方と海水温は無関係

金曜日, 12月 13th, 2013

貝に似た「有孔虫」-DNA解析などで判明・信州大

ごく小さな巻き貝のような形の動物プランクトン「有孔虫(ゆうこうちゅう)」の殻は温かい海域では右巻き、冷たい海域では左巻きになると考えられてきたが、巻き方と水温は関係がない可能性が高いことが分かった。信州大の氏家由利香研究員と浅見崇比呂教授が12日までに英ロンドン動物学会誌電子版で発表した。
 石灰質の殻を持つ有孔虫は約5億年前に出現し、化石は地層の年代や過去の海水温を推定する手掛かりとされている。浅見教授は「右巻きか左巻きかだけで過去の海水温を推定する方法は見直しが必要だ」と話している。
 今回調べたのは、世界の海に広く生息する有孔虫の一種「グロボロタリア・トルンカツリノイデス」(直径約1ミリ)。西太平洋や南北大西洋、インド洋で採集されたこの種のDNAを解析した結果、殻の形が似ているだけで、実際には5種に分類されることが判明。うち3種は、同じ種なのに右巻きと左巻きの両方のタイプが存在した。
 さらに採集された海域の水温を調べると、巻き方との間に対応関係はなかった。
 海中にプランクトンとして浮遊する有孔虫は殻の形から約50種に分類されるが、DNAを解析すれば100種以上に分かれる見込み。
 浅見教授は「有孔虫は人工飼育が難しく、研究が進まなかった。世界で初めて人工繁殖を成功させ、交雑実験を行って右巻き、左巻きの遺伝子の仕組みを解明したい」と話している。(2013/12/12-15:25)

グロボロタリア・トルンカツリノイデス有孔虫(ゆうこうちゅう)の1種「グロボロタリア・トルンカツリノイデス」(直径約1ミリ、向きを変え顕微鏡で撮影)。殻の形で1種とされていたが、DNA解析で5種に分かれ、右巻き・左巻きと海水温は無関係と判明した
(浅見崇比呂信州大教授提供)



志摩の国 国造主の墓?

金曜日, 11月 1st, 2013

志摩市教育委員会は29日、同市阿児町志島の市指定史跡「志島古墳群4号墳(塚穴古墳)」について、「6世紀末から7世紀初頭に志摩の国を治めていた志摩国造(くにのみやっこ)の墓の可能性が高い」とする調査結果を公表した。また、石室内を同日、報道関係者に初めて公開した。

 海岸近くの崖の上にある塚穴古墳は、海蝕(かいしょく)で土を盛った墳丘が失われたため、石室が崩落する恐れがあり、市教委が2012年度から3か年計画で発掘調査を進めている。
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 石室内からはこれまでに、多くの須恵器や土師器(はじき)、鉄鏃(てつぞく)(矢尻)、鉄くぎなどのほか、金銅製の耳環や石で作った勾玉(まがたま)、ガラス製の丸玉などの装身具も多数発見されている。

 市教委は、ひつぎを納める玄室(長さ約7メートル70、幅約2メートル20)が、県内では東海地区最大級の高倉山古墳(伊勢市)に次ぐ大きさであることや、発見された豪華な副葬品から、被葬者が志摩半島南部にあった志摩国の有力者で、志摩国造の可能性があるとしている。

 市教委は、副葬品などは今後、土などを落とす保存処理をしてから一般公開する。11月10日午前10時から現地説明会を開く。申し込み不要。車は古墳近くの志島小学校グラウンドに駐車できる。問い合わせは市教委(0599・44・0339)

(2013年10月30日 読売新聞)

真珠は出ない?

真珠の世界史

水曜日, 10月 2nd, 2013

山田篤美著 採取と養殖をめぐるドラマ

 真珠という言葉は、それが財宝だということを忘れさせてしまうような美しさがある。けれども真珠は、金銀やダイヤモンドと同じように人類の征服欲をかりたててやまない財宝であり、すべての財宝と同じく、血まみれの歴史をもっている。

 本書はこの財宝の歴史にまっこうから取り組んだ労作である。古代から現代まで、日本にはじまって、ヨーロッパ、アメリカ、そして中国と、さまざまな国の真珠採取の歴史がくりひろげられてゆく。

 なかでも印象的なのは、15世紀の大航海時代、コロンブスが「発見」した南米ベネズエラの真珠である。はじめは原住民が所持する真珠を収奪していたが、それが底をつくと、カリブ海の無人島を拠点にして真珠を採取するようになった。といってもスペイン人みずからが海に潜るのではなく、近くのバハマ諸島でとらえた先住民を強制連行して海に潜らせるのである。日の出から日没まで潜水労働に酷使された原住民は次々と息絶えていった。こうして「バハマ諸島は、新世界で最初の住民絶滅の地となったのである」。

 まことに真珠は血であがなわれた財宝なのだ。すでに紀元1世紀の博物学者プリニウスが、「それを獲得するには人命をも賭けねばならないような贅沢(ぜいたく)によってもっとも多くの満足がえられる」ため、「貴重品の中でも第一の地位、最高の位が真珠によって保持されている」と述べている。真珠は帝国主義の賜物(たまもの)なのである。

 この血ぬられた宝石の歴史に一つのピリオドを打ったのが、20世紀初頭の日本の養殖真珠であった。御木本幸吉が志摩の英虞湾で始めた養殖をもとに、見瀬辰平や西川藤吉たちの別の試みなど、真珠養殖をめぐる熾烈(しれつ)な競争のドラマも読みどころの一つである。

 養殖真珠の出現は世界の真珠市場を混乱に陥れたが、時とともに受け入れられて、日本はいっとき真珠王国の繁栄を誇る。1990年代に入ると、オーストラリアや中国にも独自の養殖真珠が現れ、さらには世界各地の南の海からカラフルな天然真珠が登場してきて、真珠はグローバル化時代に入ってゆく。

 目配りのよい財宝の世界史である。

(仏文学者 山田登世子)    日本経済新聞朝刊2013年9月29日

(中公新書・940円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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