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「デジタルで活躍しない人々 番外篇
    実録小説・デジタルで活躍したい男たちの晩か?(後編)」


----2001年 3月 2日

(前回までのあらすじ)
ボクの実体験を元にハードボイルドタッチでお送りした前編。
いい歳した男4人が、夜の扇町で繰り広げた苦闘。それは、ワープ
ロの文書かフロッピーディスクから、いかにしてデジタルデータを
取り出すか、ということ。スキャニング班とデータ・コンバート班
にわかれ、競い合うように互いの知識と技術、そしてアイデアを駆
使する。果たして、ボクたちはデジタルデータを取り出すことが出
来たのか?そして、その方法は?

            ×  ×  ×

カシオのワープロ専用機で作られたcso拡張子の文書をコンバートす
るソフトを探して、俺はミニソフトが集まるサイトにアクセスした。
Macintoshしかないのに、最初から、Windowsのカテゴリーから目的
のソフトを見つけようとした。Macintoshユーザーを長年続けていれ
ば、当然のことだ。最初からMacOSで動くソフトなどあきらめている。
「Windowsしか使ってないヤツは可哀想だな。だって1つのOSしか使
えないんだぜ。Macintoshならエミュレーターですぐなのにな」口を
ゆがめて1人つぶやき、Windowsのカテゴリーをながめる。だが俺は
すぐに挫折した。

あまりにも数が多いのだ。「仕方がない。フリーワードで検索する
か」そう思った瞬間、スキャナーの前に座ったスナッピーが声をあ
げた。

「ワオ!なんてことだ!」
「どうしたんだい、スナッチ」
みんなが作業の手を休めて、彼のそばに集まる。
「聞いてくれよみんな。俺は5年前使っていたOCRソフトを代わりに
インストールしたんだ」
「出来なかったのか?」
「いや。むしろ快適なぐらいだった。だってフロッピーを入れ替え
る手間がないんだぜ」
「確かに。あの頃はシステムの再インストールに一晩かかったよな」
「そうだよ。俺なんかは…」それをきっかけに、スナッチと俺は、
かつてフロッピーディスクでしか、ソフトが供給されていなかった
時代の苦労話を喋り続けた。

「スナッチ。当時の苦労話は面白いよ。ただ今大切なのは別のこと
だ」トミーは冷静だ。俺たちのリーダーに相応しい。
「そうだったな。トミー、これを見てくれ」
スナッチは、5年ぶりに現役に復帰したOCRソフトをダブルクリック
した。“メモリーが異常です”
そんなメッセージを残して、ソフトは起動ルーチインを待たずに終
了した。
「立ちあがない?メモリーが足りないんじゃないのか?」
「俺もそう思って160くらい食わしてやったさ。だがな、こいつは
5年前の世界しか知らない。当時のハードディスクと同容量のメモ
リーを食わすことなどできないんだ」
「じゃあ当時の容量で…」
「今度は今のマシンがついてこないんだ。」俺を制して、スナッチ
は答えた。「中年の域に達した男は、若くて新鮮な女とはつきあえ
ないもんだろ?」

そうこうするうち、時間はどんどん過ぎていた。依頼者のMはしび
れを切らしていた。
「もうあきらめるか?私には時間がないんだ」
俺たちは何も答えない。すでに意地になっていた。だが、そんな俺
たちプライドを切り裂くように、Mは1つの事実を言い放った。
「ここから20分ばかり車で走ったところに、俺が使ったワープロを
持つオフィスがあるんだ。今ならまだ誰かいる。1時間もあれば
MS-DOSフォーマットに直せるんだ」
もうこれ以上、Mを引き留めることは出来ない。そう判断した俺た
ちは、マウンテンが、Mを、その知り合いのオフィスへ連れて行く
ことに同意した。

ブティックそのままの、つまり暗いばかりで本当は役たたずの照明
の下、マウンテンをのぞく、トミー、スナッチ、そして俺が残った。
だが、俺たちはあきらめていなかった。

スナッチは、スキャナーに付属していたOCRソフトを再インストール
した。結果は同じ。いくらスキャナーで読み込んでも、その頑固な
ソフトウエアは、外国の言葉ばかりを吐き出した。
「やはりムリか」スナッチがあきらめかけた時、トミーが一つのアイ
コンに注目した。「これはなんだ?」
「こいつはお前のMacintoshなんだぜ。トミーが知らないものを…」
「いや、俺は見たことない」
「とすると…」2人は声を合わせて叫んだ。「OCRソフトの一部だ!」

そのスキャナーについていたOCRソフトは、実は2つに分かれていた
のだ。1つは、スキャニングと単純な言葉だけは解析できるソフト。
そしてもう一つは、スキャニングするためのシステムは持たないが、
より複雑な言葉---そう、俺たちの母国語だ!---を解析できるソフ
トだ。
つまり、2つのソフトを使いこなすことによって、俺たちは印刷され
ただけの文書から、デジタルデータを引き出すことが出来るのだ!

やはり俺たちの道は間違っていなかった。これなら、マウンテンが
DOS変換されたFDを持ち帰るより先に、デジタルデータは俺たちの手
に入る。3人は深夜のガラス張りのアジトで、ハイタッチを交わした。
だが現実は、いつも俺たちに厳しい。肝心の文書は、横向きの用紙
に縦で書かれていた。OCRにするためには、スキャニングされたデー
タを回転させなければいけない。だが、海外生まれの方のソフトは、
そのシステムを持っていなかったのだ。
横に向いた文字は、さすがの俺たちの言葉を解するOCRといえども、
ちゃんと読めない。あきらめきれずスナッチは、ムリヤリに解析を
させた。先ほどまでの海外の言葉よりも難解な文字が吐き出された。

万策はつきた。いや、1つだけ残っていた。そう。カシオのワープロ
文書をコンバートするミニソフトだ。
俺は再び端末の前に座り、検索が終わったページをスクロールした。
「トミー、スナッチ、安心しろ」俺はニヤリと笑って言い放った。
「ちゃんとコンバートソフトはあるぜ。しかも2つもな」
見つかったそのソフトは、Macintoshのものでなく、さらにWindows
のものでもなかった。MS-DOS上で動くソフトだったのだ。

俺は、Macintosh上で動くエミュレーション・ソフトウェアを起動し
た。トミーによると3ヶ月も前に買ったきりで、1度も起動したこと
がないバージンなソフトだ。
「トミー、使うあてのないソフトをどうして買ってたんだい?」
「何かあった時のためさ、ワニコビッチ」
トミーは笑った。もちろん、今がその「何かあった時」なのだ。
Macintoshの上でWindowsが起動する。ミニソフトは無事、Windows
のディスクエリアにダウンロードできた。だが、それだけではダメ
だった。圧縮されたソフトを解凍するソフトウェアがなかったのだ。
俺は再び、ミニソフトの集まるサイトへと、インターネットの海に
飛び出した。

こうしてMacintoshの世界で育った俺たちは、苦労しながらもコマン
ドラインで動くMS-DOSのウィンドウを開いた。トミーとスナッチが
見守る中、慎重にミニソフトを起動させる。
「やったな!」
「やはり、俺たちはプロだったぜ」
「ワープロ専用のディスクからデータを取り出せるなんて、敵のヤツ
らも思いもしなかっただろうな」
ないはずの敵に向かって、俺たちは奇声をあげてやった。ひとしきり
騒いだ後、俺はトミーに向かって言った。
「さあ、トミー、例のディスクを」
トミーの笑顔が、その時初めて凍り付いた。
「ディスクは、、、Mとマウンテンが持っていった」

                      【End】

映画『スナッチ』ばりの、ボクたちの(間抜けな)活躍、いかがだっ
たでしょうか?数々の徒労の果てにやっと手に入れた台本のデータは、
実は明後日3/4放送のためのものでした。
『小枝・靖・我聞の「ZAPP!」』(朝日放送テレビ・深夜24:25〜25:25)。
バラエティとドラマと情報VTRが、まるで入り乱れるように展開すると
いう、今までにない特別番組です。
ボクらの苦労を思いながら見ていただくと、さらに楽しめるはず!?
ぜひご覧になって下さいね〜!

●今回の情報リンク
・『小枝・靖・我聞の「ZAPP!」』番組紹介ページ
 http://www.asahi.co.jp/zapp/
・ベクター(オンラインソフトを一同に集めたサイト)
 http://www.vector.co.jp/


●本日のひとこと(第31回)
仕事が終わらなねぇぇぇぇ!!


【プロフィール】
齊藤恭信/さいとう わに  放送作家 フリーランス
1965年生まれ。“ハガキ職人”としてラジオを中心に投稿していたことから
放送制作の仕事を始める。現在ではten6/d'Boxを拠点に、テレビはもちろん、
雑誌からインターネットまでメディアにこだわらず活動中。
過去〜現在の担当番組:「寛平のにんげんマップ」(NHK)「大顔面テレビ」
(TVO)「晴れるヤ夢街道・浪花雪乃丞一座」(YTV) 「浜村淳のさてみなさん」
「2時ドキッ!」(KTV)などなど

現在、関西のメディア人の情報交換基地「Kansai MediArchive」を設立し、
会員を募集中。またインターネット上で活躍するタレントをプロデュースする
「iMAK」を進行中。タレントや協賛企業も募っている。
(いずれも問合せ先は:mailto:swani@kmap.net )

Copyright(C)2000 Yasunobu Saitoh/さいとうわにmailto:swani@kmap.net 
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