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「デジタルで活躍しない人々 番外篇
    実録小説・デジタルで活躍したい男たちの晩か?(前編)」


----2001年 2月 16日

「このディスクの中に、全ては入っている」重々しくトミーが言っ
た。ここはトミーが所有する隠れ家。いわば俺たちのアジトだ。だ
が、元は小金持ちおばさま方相手のブティックだった場所。道路に
面してガラス張りになっているため、アジトというにはあまりにも
筒抜け過ぎだ。そこで部屋の照明は薄暗くして、気分だけは思い切
り出している。

集まっているのは4人。最も年齢が上で、Macintoshの経験も長いス
ナッチ。1年ほど前にMacintoshに手を染め、最近ではOLD機種を集
めるトミー。Macintoshの操作よりも、車のハードウエアの整備は
お手の物のマウンテン。そして、スナッチを師と仰ぎつつ、最近
Linuxにも手を出しているワニコビッチ。これが俺だ。この4人を悩
ませている事件が起きたのは、それほど古いことではない。今から
たった1時間ほど前のことだった。

            ×  ×  ×

「お前たちが欲しがっているのはこれだろう」Mは、分厚い紙の束
を机の上に置いた。それは、2日後に迫った『計画』のために絶対に
必要な書類だった。俺たちは色めき立ったが、トミーは冷静だった。
「俺たちが欲しいのは紙じゃない。データ自体なんだ」トミーの言
う通りだ。確かに良くできた書類だったが、それをそのまま使うほ
ど、俺たちはバカじゃない。これを元に、さらに綿密な書類を作る
必要がある。「そういうと思った」Mは不敵に笑った。「データは
ここにある」そう言って彼が投げて寄こしたのは1枚のフロッピー
ディスクだった。

これで、ノープロブレム!俺たちの才能を持ってすれば、後は完璧
な書類を作り上げるだけだ。そう思った瞬間、Mはこう言い放った。
「ただし、お前たちがそのディスクを読めれば、の話だ」
「Macintoshのデータじゃないのか?」
「もちろん」
「なんだ、Windowsか。それなら・・・」
「いや、Windowsでもない」
「じゃあ、MS-DOSか?」
「ちがうんだ」
「ということは、まさか・・・」
Mは静かに首を振りながらこう言った。「そのまさかさ」。
そのディスクはワープロ専用機のものだった。

            ×  ×  ×

それから1時間かけて、俺たち4人は様々な準備を進めた。道筋は2
つだ。フロッピーディスクから、何とかしてデータを拾い上げる方
法。書類自体をスキャニングして、それからデータ化する方法。俺
たちは単純じゃない。様々なルートを準備するのが、プロというも
のだ。

スナッチは、スキャニング&データ化するソフト(俺たちの世界で
「OCR」と呼ばれるものだ)を自宅から探し出してきた。もう6年も
前のソフトだが、使いやすさは抜群。まさにプロのツールだ。
俺は、ネットワークをフル活用して、ディスクからデータを拾い出
す道を探した。幸いトミーのMacintoshは、そのディスクをマウント
することが出来たので、大量のファイルの中からそれらしいものを
見つける。
素人なら、これで大丈夫だと安心するだろうが、我々はプロだ。一
筋縄でいかないことは分かっている。期待もせず、様々なワープロ
ソフトで読み込もうとしたが、やはりムリだった。
そこで拡張子をみることにした。最近コンピューターに触れた素人
やMacintosh文化で育った人間はあまり知らないだろうが、古くから
のコンピューターを知っている者ならお馴染みの、ファイル名の最
後につく英数字3文字だ。ワープロ専用機とはいえ、最近ではちゃん
と拡張子を付けて保存している。その書類の拡張子は、「cso」だっ
た。

OCRで印刷物からハックする男たちも準備を着々と進めていた。買っ
たままで置いていたスキャナーをマシンにセットする。ハードウエ
アに強いマウンテンの活躍の場だ。「Sit!このスキャナーにはOCR
が付いていたぜ」マウンテンは舌打ちした。スナッチの作業はムダ
になったわけだ。だが、そんなことは良くあることだ。多くの道を
用意してしすぎることはない。俺たちは慎重なのだ。
起動しているUSBにスキャナーをセットする。「まったく使いやすく
なったもんだぜ。電源を落とす必要がないんだもんな」スナッチは
クールに笑って、OCRソフトをインストールした。
さっそく文書の1枚をOCRで試してみた。最新のMacintoshが様々な
処理を次々に行う。もうこれで大丈夫だろう。俺たちは誰もが胸
なで下ろした。

だが、1分もしないうちにスナッチが叫んだ。
「なってこった!」
「どうしたんだい、スナッチ」
「こいつは俺たちの言葉を理解しないヤツらしい」
「そんなバカな!?」
4人はモニターの前に集合した。俺たちの目の前に映し出される文
字は、全く知らない文字の切れ端なのだ。そしてそのソフトのどこ
をどう触っても、日本語は出てこない。日本語に対応したソフトで
はないのだ!

「仕方がない。やはりディスクからデータを拾うことにしよう」俺
がそう言うと、スキャナーの持ち主であるトミーは不安そうに訊い
てきた。「どうするつもりだい。拡張子は分かったが、それでは何
も分からないじゃないか!?」「チチチ。トミー、こんなところが
あるんだよ」俺は、ネットワーク上に開かれた「拡張子辞典」の
ページにアクセスをかけた。こうした場所を知っておくのもプロに
は必要なのだ。「cso」の答えはあっさり判明した。カシオのワー
プロ専用機が吐き出す拡張子だった。

「We did it!」トミーが歓声をあげた。だが、俺は慎重だった。
間違いがないか、カシオのページで確認することにしたのだ。件の
ワープロ機のページには、5つの機種の写真が現れた。
「Mさんよ、あの文書を作り上げたのはこの中のどれだい?」
「ワニコビッチ。残念ながらこの中にはないよ。とても古い機械
だったんだ」仕方なく、古い製品のページを探すことにしたが、ど
こにもリンクボタンはなかった。
様々な企業のサーバーにアクセスをかけることは多いが、どこも古
い機種の情報にはほとんどが直接アクセスできない。
「ユーザーサポートと書いてある割にたいしたことないな」
俺が大企業のサーバーが嫌いなのは、そうした自己中心性が見え
からだ。普通のユーザーならこの時点で「古いから仕方がない」と
あきらめてしまうはずだ。それがサポートしていると言えるのか、
非常に疑問だ・・・

話がそれてしまったな。ともかく素人ならあきらめるだろうが、俺
のようなプロならあらゆる手段を駆使してサーバーにある情報をア
クセスできる。少々苦労したが、Mが使った専用機を特定した。
間違いない。「カシオのワープロ専用機」で作られたのだ。あとは、
そのコンバーターがないか探し出すだけだ。
俺は、そうしてミニソフトが集まるサイトにアクセスしはじめた。

                   【To be continued...】

ということで、今回はここまで。
実はこれ、3日前の晩に、実際にボクが経験した出来事を、ハード
ボイルドタッチにしたものです。とある特番のための台本を、いか
にしてデジタルデータとするのか?いい歳した男たちの苦闘が、夜
の扇町で繰り広げられたのです。果たして、ボクたちはデジタル
データを取り出すことが出来たのか?そして、その方法は?次回を
お楽しみに!

●今回の情報リンク
・拡張子辞典
 http://www.jisyo.com/viewer/index.html
・カシオ「ワープロ専用機」ページ
 http://www.casio.co.jp/darwin/
・ベクター(オンラインソフトを一同に集めたサイト)
 http://www.vector.co.jp/

●本日のひとこと(第30回)
この3月にいろいろ変わります。車、事務所、仕事・・・ 果てさて、
これからの人生はどっちへ転ぶんでしょうねえ?

【プロフィール】
齊藤恭信/さいとう わに  放送作家 フリーランス
1965年生まれ。“ハガキ職人”としてラジオを中心に投稿していたことから
放送制作の仕事を始める。現在ではten6/d'Boxを拠点に、テレビはもちろん、
雑誌からインターネットまでメディアにこだわらず活動中。
過去〜現在の担当番組:「寛平のにんげんマップ」(NHK)「大顔面テレビ」
(TVO)「晴れるヤ夢街道・浪花雪乃丞一座」(YTV) 「浜村淳のさてみなさん」
「2時ドキッ!」(KTV)などなど

現在、関西のメディア人の情報交換基地「Kansai MediArchive」を設立し、
会員を募集中。またインターネット上で活躍するタレントをプロデュースする
「iMAK」を進行中。タレントや協賛企業も募っている。
(いずれも問合せ先は:mailto:swani@kmap.net )

Copyright(C)2000 Yasunobu Saitoh/さいとうわにmailto:swani@kmap.net 
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できます。当文書は有用だとは思いますが、頒布に当たってはいかなる保証も
行いません。詳しくは
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後編

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