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「番外篇 手作り音楽CD制作の裏側」/みさと天文台長 尾久土正己
----2000年 10月 20日


さいとうわにです。

本日は、ちょっと素敵な人の文章を読んで頂きたいと思います。昨
年、EPOさんの水上ライブを企画した時からの友人で、みさと天文台
台長をなさっている尾久土さんです。
尾久土さんは、みさと天文台を"インターネット天文台"としてプロ
デュースしたり、日蝕の様子をストリーミング中継したりと、デジ
タルを最大限に活用した活躍をされているのでご存知の方も多いと
思います。

その彼が、今度はなんと、全て手作業で音楽CDを制作し発売したと
いうのです。話を聞いてみると、その裏舞台がかなりユニーク。し
かもまだ、いろいろとご苦労が続いているとか…そこでKIPでご紹介
して、"ぜひみなさんに協力してもらいましょう(^_^;)!"というこ
とになりました。

コラムの最後まで、しっかりと読んでもらえると、ボクも尾久土さ
んも嬉しいです。 

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「天文台長が音楽CDを作ってしまいました」
                                 みさと天文台長 尾久土正己
【きっかけ】
GW中の星のきれいな夜でした。星空の美しさは、晴れていればいつ
も同じではないのです。1年に一度あるかないかの美しい夜だった
のです。天文台には、有線放送が来ているのですが、その空にピッ
タリ合う音楽は残念ながらありません。「そうだ、CD作ろう!」と
思うまでに1分もかかりませんでした。
私のこんな思い付きに、毎回、多くの仲間を道連れにしてきていま
す。でも、どう考えても、あまり仕事と結びつけにくい企画なので、
この際一人でやってみることにしました。

私に音楽的才能があれば、演奏も自分でやるのですが、中高生のこ
ろに、フォークギター片手に拓郎を歌っていた程度の経験しかあり
ません。そこで、演奏してくれるミュージシャンを探さないといけ
ません。私は学生時代から約20年、ずっとジャズを聴いていたので、
作るならジャズのアルバムです。一昨年、流星群の単行本を監修し
たときに、エッセイを寄稿してくれたピアニストの甲斐恵美子さん
に、まずメールを書いてみました。

 『>天文学者の私が、星と音楽を愛する人たちに、アルバムをプロ
  >デュースできないかと考えたのです。
  すばらしいアイディアだと思います。
  音楽産業の人々が作る音楽ではなく、星と地球を愛するひとが
  音楽を作るのが本来の姿だと思います。』

という返事をその日中にもらうことができました。こうなれば、も
う私の衝動を止めることはできません。ボーカルの中谷泰子さんに、
すぐにメールを書きました。彼女とは、この春、大阪の行きつけの
ライブハウスで知り合いました。ジャズシンガーらしからぬ美しい
声で歌っていたので、「星や月の歌ならなんでも!」とリクエスト
カードに書いて出したところ、予定していた曲をすべてキャンセル
して星や月の歌ばかり歌ってくれたのです。星のアルバムを作るな
ら、彼女以外に考えられません。ベースは、長年、甲斐恵美子さん
と演奏をしている山田晃路さんを推薦してもらいました。

【録音・マスタリング】
当たり前のことですが、私は売り物になるような録音をやった経験
はありませんでした。目標は、自然な星空のようなサウンドを録る
ことです。そこで、天文台の近くにある町立のクラシックホール
「みさとホール」を使うことにしました。
このホールは、国内でも屈指の音響性能と評価されているのですが、
悲しいことに、十分に活用されていません。テスト録音にと予約を
入れたところ、6月は全日空いていました…。

ホールの音を空気ごとそのまま忠実に記録するには、できる限り機
材はシンプルな方がいいはずです。ホールにあるマイクを2本だけ
借りて、手持ちのバイオのハードディスクに保存することにしまし
た。そうは言うものの、マイクのレベルをラインレベルに上げるミ
キサーとデジタル変換器が必要です。日本橋を歩いて、数万円でそ
ろえることができました。

たった2本のマイクで3人の演奏をバランス良く録音することは大変
です。何より、人間とピアノでは音量がまったく違うからです。そ
こで、奥から、ピアノ、ベース、ボーカルと一直線に並んでもらっ
て、その前方に少し離して、マイクを2本立てることにしました。
当然のことながら、ピアノはホールの間接音が中心になりエコーが
大きくかかり、ボーカルは直接音が主になり、エコーの利かない生
声になりました。
テスト録音のあと、3人のミュージシャンに聴いてもらうと、ボー
カルの中谷さんからは、「こんな生声格好悪い!」、ピアノの甲斐
さんは、「もっと輪郭のある音がいい」とクレームをつけられまし
た。よく考えてみると普通の味付けの反対になっていたのです。

しかし、ここで、負けていてはプロデューサ失格です。エコーの利
いたピアノとベースは星空を表していて、ボーカルは、地上に降り
立って自分たちの耳元で歌ってくれている情景を想像してください!
と説明して納得してもらいました。

【販路の開拓・営業】
こうやって七夕の前日に録音した音源は、私のバイオの中で熟成さ
れ、公開の日を待っていました。しかし、レコード会社でもない私
の作品をどうやってCDショップに並べてもらうのでしょうか?サー
チエンジンに、「インディーズ 卸」とキーワード入れ、何社かの
サイトを発見し、電話やメールをして、今回お世話になったラッツ
パックレコードさんにお世話になることになりました。想像してい
たとおり、素人の作品でも扱ってくれる業者がいるのです。

私の企画を遠くから見守ってくれていた知人の多くは、「ネットで
販売した方が尾久土さんらしいよ!」とアドバイスしてくれました。
しかし、誰かもそんなことを言っていましたが、"CDは手に取って
みないと買う気になれない商品の一つ"だと私は思っています。
そういう意味でも、ジャケットのデザインは大切です。録音の直後
にあった皆既月食の写真を使うことで、人目をひくCDになったかな
と思っています。とりあえず、販路の目処もできたのですが、その
ままでは、CDショップから注文が来るわけありません。インディー
ズの新譜情報は毎日大量に流れています。その中で、注目してもら
うには、結局、足で営業するしかないのです。休みの日を使って、
ボーカルの中谷さんと大型店をまわって頭を下げている今日このご
ろです。しかし、その甲斐あって、次第に注文が入ってくるように
なりました。

とにかく、山積みになっている箱を空にして、ミュージシャンに
ギャラを払わなければいけません。その次の目標として、再プレス
があります。まずは、山を減らすために、みなさんにご協力いただ
けるとうれしいです。

●今回の情報リンク
・ラッツパックレコード
 URL:http://www.lyra-records.com/
・みさと天文台
 URL:http://www.obs.misato.wakayama.jp/

●本日のひとこと(第24回)by 尾久土正巳

【CD発売記念ライブのお知らせ】
CDの発売を記念して、大阪で11/2にライブを行います。100人集めな
いと、甲斐さん、山田さんの新幹線代、宿泊代を稼げないのです(涙)
ご協力よろしくお願いします。今回のイベントの前振りとして、9月
に「ジャズと天文学の夕べ」というイベントを提案したところ、参加
者を見るとまるでウェブマスターオフのような会になりました。

URL:http://mars.obs.misato.wakayama.jp/~masami/jazz/
今回も、おそらく同じような顔ぶれが集まると思います。音楽鑑賞の
ついでに、ビジネストークもいいかもしれませんよ。

【場 所】 ロイヤルホース(大阪市北区)
     URL:http://www.mmjp.or.jp/live-info/shop/rhorse.html
【日 時】 11月2日 19:30〜
【チャージ】前売り3000円、当日3500円
【予 約】 10/28までにmailto:okyudo@obs.misato.wakayama.jpへ

【CDの情報】
 「今夜教えて」Lyra Records/販売元ラッツパックレコード
  型番 LRJZ-1001 販売価格 3000円(本体)
  URL:http://www.lyra-records.com/    
  イベントでも購入できますが、タワーレコードやHMV、ヴァージン
  などでも購入できますので、よろしくお願いします。


【プロフィール】
●齊藤恭信/さいとう わに  放送作家 フリーランス
1965年生まれ。“ハガキ職人”としてラジオを中心に投稿していたことから
放送制作の仕事を始める。現在ではten6/d'Boxを拠点に、テレビはもちろん、
雑誌からインターネットまでメディアにこだわらず活動中。
メールはこちらまで<mailto:swani@kmap.net>

●尾久土正己/おきゅうど まさみ  和歌山県みさと天文台天文台長
天文台長と聞くと、年寄りと想像される方が多いが、神田さんと同世代(?)。
高校教師を6年、兵庫県立天文台に5年、そして、みさとに赴任して5年。
そろそろ次の仕事へ進まなければと焦って音楽の世界に手を出し始める。
ここ数年は、インターネットを利用した天文教育活動で、世界のリーダー的
存在。でも、少し飽きたかな…(冗談)。
主な著書に「インターネット天文台」岩波書店、他
メールはこちらまで<okyudo@obs.misato.wakayama.jp>

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