世界初、真珠形成の遺伝子特定

【東京】
東京大とミキモトの共同研究チームは、日本産アコヤガイが真珠層を形成する際に働くほぼすべての遺伝子の特定に成功したと発表した。世界で初めてという。日本固有のアコヤガイは美しい光沢が特徴で、世界で最も優れた品質を持つことで知られている。しかし近年は感染症の流行や漁場環境の変化などで生産は減少傾向となっていた。ミキモトなどは今回の成果が、日本産アコヤガイ特有の美しさを解明する手掛かりになるとともに、優良な真珠母貝の品質保持や、耐病性の向上などにつながると期待している。

 米科学雑誌「プロスワン」に二十三日(日本時間)、研究成果の論文が掲載された。

 アコヤガイの真珠は、炭酸カルシウムのアラゴナイト結晶と呼ばれる結晶が規則正しく幾層にも重なって作り出されるが、これまで真珠層形成時に働く遺伝子はほとんど解明されていなかった。
 今回、東京大大学院農学生命科学研究科の渡部終五教授らの研究チームとミキモトグループが共同研究チームを組み、ミキモトが守り続けてきた日本固有のアコヤガイを対象に、〇七年から真珠形成の遺伝子を追求してきた。

 遺伝子解析は、遺伝情報がまったくない生物でも網羅的な解析が可能な「次世代シーケンサ」と呼ばれるシステムを用いて実施。その結果、これまで判明していた三百個のアコヤガイ遺伝子の約百倍の三万個の遺伝子を特定し、真珠形成で働くほぼすべての遺伝子情報を取得することができたという。このうち、真珠層形成に関連した五十二個の遺伝子を新たに発見した。
 会見した渡部教授は、五十二個の新たな真珠形成関連遺伝子の発見などを「画期的な成果だ」と話し、「アコヤガイの病気の問題などもクリアし、世界をリードする技術になる」と強調。ほかに化粧品への利用や、将来的には骨形成に関連する病気の治療、新機能材料の開発などへの応用も期待されるという。
 ミキモト真珠研究所の永井清仁所長は「日本産アコヤガイの光沢の美しさは別格」と話し、「今回の成果を、美しく病気にも強い品種づくりに生かしていきたい」とした。


「次世代シーケンサ」(次世代シークエンサー)とは、Sanger シーケンシング法を利用した蛍光キャピラリーシーケンサーである「第1世代シーケンサー」と対比させて使われている用語です。初期の頃は塩基配列決定の為の試薬や測定器が非常に高額で大学でも予算をつけるために大変苦労をしました。現在のシーケンサーは、光検出を行わないので、試薬代が安価になり、かつ光検出器が必要なくなりました。ここ5年ほどで価格は1/10以下になり、驚くほど高速で結果が出るようになりましたね。

東京大学大学院農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻
 http://www.fs.a.u-tokyo.ac.jp/
水圏生物科学専攻 水産化学研究室 研究業績
 http://mbl.fs.a.u-tokyo.ac.jp/jp/paper.html

今回の、東京大学農学生命科学研究科のプレスリリース
 http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2011/20110624-1.html
 http://megalodon.jp/2011-0627-1839-26/www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2011/20110624-1.html

東京大学大学院農学生命科学研究科での発表
アコヤガイの遺伝子情報について説明する渡部教授:東京大学大学院農学部