アーカイブ 8月, 2012

福島からの涙の電話

金曜日, 8月 31st, 2012



2012年7月2日。
その電話が私たちの許に掛かってきたのは、
梅雨の晴れ間が広がる、気持ちの良い月曜日の朝でした。

「岩城真珠さんですか?」

電話の向こうの声は少しくぐもった感じで、
受話器の向こうからでも、明らかに警戒の色が伺えました。
とはいえ、それ自体はとくに珍しいことではありません。

「パールネックレスを注文したいのですが……」

そんな言葉のあとに、暫しの沈黙。
「……」の中には、「本当に大丈夫なんでしょうね?」「まさか騙したりはしませんよね?」という声が聞こえてきそうなほどでした。

インターネットで真珠の通信販売などという商売をやっておりますと、初めてご利用のお客様には必ずと言っていいほど、大なり小なりの不安を抱かれてしまうものです。
もっとも、一度でもご注文をいただいたお客様には、そんな不安は杞憂に過ぎなかったと笑って頂けるのですが、高額な宝石をインターネットで購入しようというのですから、最初はどうしても致し方ないことだと思います。

「娘に、真珠のネックレスを贈ってあげたいのです」

これも、真珠を扱っている私どもにとっては、とくに珍しいご依頼ではありません。
お母さまからお嬢さまへ、またはその逆に、お嬢さまからお母さまへ。
気品漂う真珠の輝きは、世代を超えた素敵な贈り物です。


Sさんがご注文下さったのは、
準花珠真珠ネックレス 8.0mm~8.5mm 約42cmのピアスセットです。
価格は、税込で18万円弱。

品質から考えると、お値打ち品であるのは間違いないのですが、Sさんがネットで高額商品を注文するのは、これが初めてです。


「できるだけ、傷のないものを選んでくださいますか?」
「もちろんです。最高のものをご用意します」

「プレゼント用の包装をして頂けますか?」
「しかし包装しちゃうと、私が先に見て確認することができないし・・・・・」
「はい。それでは、お母様が先に見える形に、包装し直しが出来るようなプレゼント包装にさせて頂きます。華やかなので、きっとお喜びになると思いますよ。」


そんなやり取りをしている内に、少しずつご安心頂けたのか、Sさんの声も心なしか明るくなったような気がしました。

Sさんだけに限らず、弊社でのお買い物を通して、また弊社の真珠を通して、お客様の心が楽しく明るくなるのは、何よりも嬉しいことです。

「それでは、岩城さんを信用いたしますので、どうぞよろしくお願い致します」

Sさんは最後にそう念押しをされて、お電話をお切りになりました。

お電話の後に、お伺いしたご住所が私たちと同じ名前の福島県「いわき市」だったのが強く印象に残りました。



再び、Sさんからお電話を頂いたのは、それからおおよそ一週間後のことです。

「ありがとうございました!」

電話口のSさんは、少し興奮気味に話を切り出されました。

でも、お話の内容は辛いものでした。

「じつは・・・私は今、避難所で生活を送っています。」

ご自宅は、福島県。
福島原発まで約3.5Kmの場所だそうです。

お話をお伺いしながら、一年前の、あの光景が脳裏に浮かびました。
テレビ画面を通してでも、胸が痛む津波の映像。
さらに追い打ちをかけるように、福島原発の無残な映像に、目に涙が溢れ、胸が痛くなるのです。

実際に、自分の家が、町が、あの未曾有の災害に巻き込まれた方の、恐怖や悲しみはどれほどのものでしょう。ましてや、あれから一年以上経った今でも、いつ帰れるとも知れない避難生活を送っている方々の心境は計り知れません。

そんな中、Sさんはネックレスのご注文をくださったのでした。
ご自宅のある場所は立ち入り禁止区域になってしまっているので、携帯電話でのご登録でした。
「電話番号はあるのだけど、立ち入り禁止の自宅なの。だから携帯電話で申し込んでごめんなさいね」

自宅近辺のなじみの宝飾店は当然営業できるお店もなく、避難生活で移り住んだ地域は、まだ知り合いも少ない。
そんな中、当初は他社様の通販のサイトで真珠をご覧になっていたそうなのですが、調べていくうちに、弊社の真珠を見つけて下さったそうです。

「正直なところ、いまも不安でいっぱいです。怖くて、怖くて、仕方がないです」

と、Sさんは仰いました。


「震災のあと、精神的にも体力的にも、苦しいことや辛いことが多かった日々ですが……」

涙で言葉をつまらせるSさん。
この一年余りのご苦労を察すると、こちらも熱い想いが込み上げてきました。

「娘には、ずっと大事にしてもらえる、本当に良いものをプレゼントしたいと思ったのです。でも、避難所生活なもので、なかなか買い物にも行けなくて。インターネットで探したものの、買い物をするなんて初めての経験ですから、不安でいっぱいでした。注文してからも、もしも届かなかったらどうしようとか、届いても値段に見合わない二級品や偽物だったらどうしようとか……注文した後も、そんな不安ばかりが募って、眠れない日もありました」

最初に充分なご説明ができていなかったのかもしれません。
不安にさせてしまって、ごめんなさい。
そう、謝罪申し上げますと、

「とんでもない。こんなに良い買い物が出来て、本当に喜んでいるんですよ。岩城真珠さんのおかげで人の優しさに触れることが出来て、嬉しくて泣いてしまいました。素晴らしいお品を、あたたかく届けてくださって有難うございました。娘も、本当に喜んでくれると思います。私はそれが嬉しくて……」

震えるお声でSさんはそう仰いました。
こんなに嬉しいお言葉はございません。
私の視界も、溢れ出した涙で滲んでしまいました。

真珠は、母貝の体内で年単位の時間をかけて育まれる自然の宝石です。
きっとSさんの想いも、真珠のネックレスとともにお嬢様の心に届いたのだと思います。

「ありがとうございました」

お電話を切った後も、胸の中が熱いもので満たされていました。
もちろん、Sさんのご苦労は、まだ終わったわけではありません。
でも、ほんの少しでも、SさんやSさんのご家族のお気持ちを明るくするお手伝いが出来たかもしれないと思うと、この仕事をやっていて本当に良かったと思うのです。





真珠ネックレス
実際にお送りさせていただいたネックレスと注文書です。
(準花珠真珠ネックレス 8.0mm~8.5mm 約42cm ピアスセット)



PEARLS Jewels from the sea 「パール 海の宝石」展

日曜日, 8月 19th, 2012


7つの梨型真珠をつけたダイアモンドのティアラ 1830年頃/ドイツ/カタール美術館蔵


日本とカタールの国交樹立40周年を記念して「パール 海の宝石」展が兵庫県立美術館で開催される。
真珠の発祥地とも言えるアラビア湾の天然真珠は、2000年にもわたる歴史の中で王族や権力者の象徴として煌びやかな宝飾品として受け継がれてきた。
ただ単に美しいものとだけではなく、文化的にまた科学的にどのように珍重されてきたかを紹介している。


アラビア湾の天然真珠
アラビア湾の天然真珠



開催期間
  2012年7月28日~2012年10月14日 10時00分~18時00分(入場は17時30分まで)
開催場所
  兵庫県立美術館ギャラリー棟3階
  神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
観覧料金
  一般:1,300(1,100)円
  大学生:900(700)円
  高校生・65歳以上:650(550)円
  中学生以下は無料
※( )内は20名以上の団体割引料金


芸術の館 兵庫県立美術館

画像は兵庫県の公式HPページから引用しました。